
好きになったらダメだよ
第3章 声は出したらダメだよ?
18時前にようやく解放され、ひとまず職員室に戻ると、主任もおり、2学年の担任たちと談笑していた。
「お、澤田先生!川田、ちゃんと取りに来たよ。それで、家に持ち帰らず教室で課題をするって言ってたから、まだ残ってるかもしれない。」
えっ……?まだいる……?
とりあえず自分のデスクに会議の資料をどさっと置いた。
職員室にもきちんとデスクはあり、普段はここで仕事をすることも多い。
「おつかれーす。」
隣から伸びのあるハスキーボイスがする。
「ああ、どうも。」
「相変わらず愛想ねーなー。」
そう言って、ココアを片手にケタケタと笑うのは、英語教師でサッカー部顧問の橘拓海(たちばな たくみ)。
長身(多分、180センチはある)に締まった下半身、癖っ毛のふわふわした髪は、パーマをあてているようで、こいつにはよく似合っている。
眠たそうな垂れ目が可愛らしく、女子から絶対な人気がある。
そんな橘とは同期であり、橘はしょっちゅう私に絡んでくる。
「川田の様子見に行くの?」
「そうだけど……。」
「ふうん。じゃあさ、あいつに明日はリーディングの予習してこいよって伝えといて。」
「……分かった。」
なんだろう……
なんか橘の笑みにゾワッとした。
