好きになったらダメだよ
第1章 好きじゃないけどいいですか?
「川田くんさー、どうして私に呼ばれたか分かるよね?」
教師としての威厳を保たなきゃと思って、睨みつけるように、彼を見上げる。
身長155センチしかない私には、川田くんは話すだけで威圧感に負けそうになる。
「……中間テストが悪かったから?」
「そうです。悪いで済む話じゃないわよ。どうして数学だけ赤点なの?」
他は平均点なのに、私が受け持っている数学Bだけは20点だ。
「もともと数学は苦手。てかやってて意味あるの?」
「はぁ……つべこべ言わないの。課題やってもらうから来て。」
川田くんを手招きして、私は彼を数学準備室に案内した。
これが全ての始まりだとは、そのときは思いもしなかった。