好きになったらダメだよ
第4章 大人って大変だね?
[明日のデート、ダメになった。急な出張入った。]
保からだ。
「なに?澤田は別に彼氏いんの?」
橘から隠すように開いたのに、上から覗き込んでくる。
これだから無駄にでかいやつは。
「橘には関係ないでしょ。」
「関係ないけど、川田はそのこと知ってるわけ……?」
「……知ってる……。でも、伊都もきっと彼女がいる。」
あれだけ揃えられた部屋の化粧品は、本命の女の子、もしくは女の子を好きに選び放題している証拠だ。
「伊都だって。下の名前で呼ぶなんて、実は彼氏よりも気になってるんじゃないの?」
「バカ言わないで。いくつ違うと思ってるの。」
「好きになったら、そんなの関係ないだろ。」
そう言うなり、橘は私のスマホを奪い取った。
「ちょっ…なにするの!?」
返してと手を伸ばすと、背中でガードされてしまう。
サッカーやってるせいか、身のこなしが早い。
「送っといてやったから。」
「はっ?」
「川田に。会いたいって。」
「はあー!?あんな勝手になにやってんのよ!!」
「川田、飲み会が終わるの待っててくれるらしいよ。健気だねー。会いに行ってあげなよ。」
……橘が勝手にしたことなのに。
なのに……
私はこれを利用して、この後きっと彼に会いに行ってしまう。