好きになったらダメだよ
第4章 大人って大変だね?
「どうだった?川田の体は?」
「ゲホゲホッ!!」
梅酒が喉に突っかかってむせた。
「あんた、なんでそれ……」
「そりゃ教室でセッ……」
慌てて橘の口を塞ぐ。こんな他の先生のいる前で何を言い出すんだ。
「見てたわけ?」
「あんなとこでイチャつくお前らが悪い。だけどすぐ逸らしたよ。人のセックス覗き見るほど病んでねーし。」
「あの……」
誰か別の人もいたんじゃないだろうか……そんな不安が頭をよぎる。
「いないよ、誰も。あの日は俺が校内の見回り担当だったし。でも、気を付けてくださいよ。見つかりそうな場所の方が燃える気持ちも分かるけど。」
嫌味ったらしく、ニヤニヤと顔を緩ませる橘に弱味を握られた気がした。
「上に言付けるつもり?」
「いいやー。世の中持ちつ持たれつだしねぇ。」
興味など微塵もなさそうな橘。持ちつ持たれつとはなんのことだろう。
私は橘の弱味などひとつも知らない。
梅酒に手を伸ばし、もう一口飲もうとしたら、スマホがメッセージを受け取った。