好きになったらダメだよ
第4章 大人って大変だね?
それから、波打ち際で波と戯れて、二人で子どもみたいに砂で山を作って、トンネルを掘って遊んだ。
そう遊んだ。
その言葉がぴったりだ。
伊都はどこからかバケツを拾ってきて、海水を使いながら器用に砂を固めていく。
それがすんだら、砂山の真ん中に穴を開けていく。
「愛莉、さっさと穴掘れよ。」
「もう!分かってるけど!」
「俺、半分以上掘ったよ。」
「待って!もう少し!」
犬みたいに膝をついて、前屈みになって、伊都の反対側から両手で穴を掘った。
「あっ!」
触れた。
伊都の手。
「つながったね。」
「うん!つながった!すごいね。私、つながったの初めて!」
いつ以来だろうか。
こんなに無邪気に何も考えずにはしゃいだ日は。
「ねえ、伊都。」
「うん?」
「また来れる?」
「うん。いつでも連れてきてあげる。」
この約束が不確かなものであることは、言われなくても分かっている。
それでもこの時間を鮮明に自分の中に刻み込んでいたかった。