好きになったらダメだよ
第4章 大人って大変だね?
二人で砂浜に座って、先刻パン屋で買ったパンを食べた。
たまごサンドにツナサンドにコロッケサンド。
大きな口を開けてかぶりついたら、伊都は顔を緩ませた。
「付いてるよ、頬っぺたにたまご。」
人差し指で頬に触れ、そのまま伊都の口に消えていく。
「うっ……ありがとう。」
「美味しい?」
「うん、すごく!幸せ!」
真っ青な海と空の下。
波の音しかしなくて。
私はもっと美味しい食べ物だって
高価な食べ物だって
オシャレなカフェも
ドレスコードして入るレストランも知っている。
それなのに
そんなものよりもずっと
このサンドイッチの方が
この場所の方が美しくて眩しく見えた。