テキストサイズ

好きになったらダメだよ

第5章 もし本当になったらどうする?



「そうそう、愛莉ちゃん知ってます?」


刈谷さんは遠慮なく、離席している諏訪先生の席に腰を下ろす。


「何を?」


「文化祭のジンクス。」


刈谷さんは頬の横に垂れた後れ毛に指にクルクルと絡ませる。


「うちの学校って、1日目の夜に花火があがるでしょう?」


そう。普通に考えたら有り得ないんだけど、学校の規則の大枠を決めている生徒指導部長の父親が花火師らしく、夏祭りの花火大会の予行練習とかいって、いくつか花火を上げてくれるのだ。


「その花火をね、一緒に見た人といつまでもずっと一緒にいられるっていうジンクス。」


刈谷さんは少しはにかんで、上目遣いでこちらを見る。


きっと彼女には一緒に花火を見たい人がいるんだ。


「愛莉ちゃんは?」


「へっ?」


「誰と一緒に花火見たい?」


「……私は……先生だからなあ…みんなが楽しむ姿を眺めさせてもらうわ。」


彼女に教師らしい返答しかできない。


教師が生徒の前では、はしゃいだりできない。


「愛莉ちゃん、そんなのだと幸せ逃すよ?」


……幸せ……なんだか今日はこの手の話題が多い。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ