好きになったらダメだよ
第5章 もし本当になったらどうする?
夏美や橘の言葉が頭から離れないまま放課後を迎えた。
今日から学校では文化祭の準備が本格的に始まった。
数学準備室の窓から中庭を見ると、段ボールにペンキで色を塗ったり、テントの骨を組み立てたりしている。
数学準備室には、私以外に人はいない。
みんな会議に出たり、担任のためクラス指導にあたったりしている。
……文化祭、楽しそう……。
自然と伊都を目で探してしまう自分がいて、慌てて窓から目を離す。
その矢先、
「愛莉ちゃーん。」
ガラリとドアが開いて、メイド服姿の刈谷さんが姿を見せた。
「見てみて!似合う?」
フワフワの髪を器用にお団子にまとめて、スカイブルーのリボンを結んだ刈谷さんにはピッタリだ。
「よく似合ってるわよ。文化祭の準備?」
「そうなんです。メイド・執事喫茶するんです。愛莉ちゃんも遊びに来て下さいね。伊都の執事姿も見れますから。」
ニコニコ笑いながら、さらっと伊都の名前を出す彼女に、心臓がトクンと音を立てる。