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ぜんぶ二人ではじめて

第1章 出逢い

「じゃぁ、私、帰って練習するね!お互い頑張ろうね!」

そう言って、足早に彩月ちゃんは去って行った。

すると、

「ヤスくん!」

「何?」

「これ、頼まれてたやつ。」

「あ、サンキュー」

同じクラスの根岸泰宏(ねぎしやすひろ)くんと、根岸昌樹(ねぎしまさき)くんが何やら楽譜を持って歩いていた。

そして、そのまま、校舎の一番奥のベランダに出て、フルートを奏で始めた。

上手……!!!

キレイ!!!

心が清らかな音色。

思わず聴き入っていた。

曲が止んだ。

「相変わらずだこと!」

根岸昌樹くんが泰宏くんの音色を誉める。

「サンキュ。帰ろうぜ。」

二人が振り向いた。

「あ……」

ほとんど初対面の二人だから、言葉にならなくて。

立ち尽くす……。

「市川さん。サヨナラ。」

泰宏くんが話しかけてくれた。

「あ……サヨナラ……。」

泰宏くんは目の前を過ぎ去った。

「ヤスくんの音、カッコイイよね!」

昌樹くんが足止めして、私に話しかけた。

「うん!」

本当に素敵な……色気のある、音色……。

あんな音、出せたら気持ちいいだろうな。

「昌樹ー!帰るぞー。」

離れた廊下の向こうから泰宏くんが叫ぶ。

「はいよー!」

昌樹くんが答えて私の前を通り過ぎて、振り向いた。

「俺も、ヤスくんのフルートのファンなんだ!ヤスくん、毎日、ここで2~3曲吹いてから帰るから、また良かったらおいでよ!じゃあね。」

と。

「ありがとう……サヨナラ。」

それから泰宏くんの音色が頭から離れなかった……

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