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霧崎の裏のカオ【BL短編集】

第1章 中毒 【古橋康二郎×花宮真】

古橋SIDE

昼休みの教室。窓際の一番後ろの席には二つの長身の姿。

俺は現代文の教科書をぱらぱらとめくり、もう一人…原はそんな俺を見ながら、いつも通りの緩い口調で愚痴やら何やらを聞かせてくる。

無論、俺は無視をし続けるが、原はお構い無しに話し続ける。

時々、原が好きだという女子の噂を聞くが、こんなんが良いのか。ただただ鬱陶しいだけだ。


俺が無視し続けたため原が不満そうにこちらを見てきた。
このままだとフーセンガムを割られて、その音が余計に鬱陶しくなるだけなので、しょうがなく話を聞いてやることにした。

「原、話をするなら面白い話にしろ。不毛だ」

「ズバッと言うねぇ、古橋君。一哉君の心にグサッって刺さったんだけど」

「……」

こういうのが鬱陶しいんだ。特にこの口調。人をイラつかせるのに特化しているとしか言いようが無い。

そう思っていたのが顔に出たのか原は「分かったって。面白い話でしょ?」と言って、ぶつぶつ言いながら考え始めた。


しばらく考えて原は何か思いついたように手を叩き、満面の笑顔になった。

「ねーねー、古橋。好きな人とか居ないの?」

俺は原のその一言に硬直するしか無かった。

こいつの面白いは「好きな人居る?」なのか。

いや、硬直した理由はそこじゃない。

俺には好きな人がいる……が、到底人には言えない相手だ。
そんなのをこんな奴に言ったら、もしバレたら俺は間違いなく終わる。




俺が好きなのは花宮だ。でもそれはあってはいけないことだ。
俺は男、花宮も男。こんな恋愛は成立しない。そんな世の中だ。

「……特には居ない」

そう答えるしかない。

すると原は「つまんないの」と頬を膨らます。

「あ、でも~」

「? 次はなんだ。悪いがこの手の話はパスだ」

「いやさ、古橋っていつも花宮のこと見てるなー、と思って。もしかしてそっちなのかな、っておもってさ」


なんなんだこいつは。サトリか。

「……下らないな。ありえない」

今更そう答えてもこいつなら当ててしまいそうだったが、一応隠す。

「まぁそうだよねぇ。だとしたら引くし」

勝手に引いておけ。

そう思ったが、いちいち声に出すのも面倒なので黙りこけることにした。

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