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霧崎の裏のカオ【BL短編集】

第1章 中毒 【古橋康二郎×花宮真】

「あ、でも~」

「次はなんだ」

こういう日に限って休み時間は長い(実際には長く感じるだけだが)。早く終わって欲しい……そうすればこの原の尋問からも逃れられるのに。

原はそんな俺の気持ちもお構いなしに話を続ける。

「俺、ザキとなら付き合える気がする」

唐突な爆弾投下。こいつは本当に何なんだ。

「お前、何言ってるんだ……?」

「いやだって、ザキ面白くない?それに加えて、イジった時の反応がかわいい」

「……」

俺はもう言葉が出なかった。
あの山崎がかわいい?おかしい。
こいつは前から感覚がおかしいとは思っていたが、ここまでとは。


いや、俺も大概か。
花宮を好きだということだけでも、俺は異常なんだ。

だから何とも言えないが____。

「原、お前は疲れてる。今日は早退したらどうだ?」

「!?疲れてないし!めちゃくちゃ元気だよ」

「じゃあ山崎がかわいいっていう発想はどこから来たんだ」

「あーもー、だからさぁ~……」

それから原は俺に山崎のかわいいと思うところを熱弁してきた。
……当の俺はいまいちピンとこず、不思議に思うばっかりだったが。

「は~、なんでここまで言って伝わんないかなぁ……ザキはかわいいの!」

「伝わらないのは当たり前だ。俺は一切聞く気が無い」

ひっど、と原はあからさまにショックを受けていた。
でもここまで来ると、原にもあっちの気があるのではないかと思ってしまう。


「そこまで言うなら、俺にではなく、山崎に直接言ったらどうだ?」

すると原は一瞬きょとんとして、次の瞬間、「それ良いかも」と俺の手を握ってきた。

「ザキの困ってる顔が見れるかもしんない……!古橋、ありがとう!」

原は自己解決し、教室を飛び出した。そして5秒も経たずに、「ザキー!!」「うぉっ?!なんだよ、原。うっせぇな」という二人の叫び声が聞こえてきた。


俺は原が居なくなり、周囲には俺しか居なくなった。
静かになったので、読書でもしようかと思ったが、1つの思いが脳裏をよぎる。


(俺もさっさと花宮に言えたら楽なんだがな)

原のように素直に言えれば―当の本人は本気じゃないだろうが―どんなに苦しまずに居れるのだろうか。
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