
今宵もネムリヒメに素敵な夢を...♡
第2章 バレンタインの事情♡その①
バサッとコートとジャケットを脱ぎ捨て、切れ長の目を鋭く光らせる渚くん。
「ちょっとこっちこいよ…」
救世主!?
エロスの化身!?
あぁ…それってなんだっけ…
今の彼にそんな面影はどこにもない。
その姿、まさに魔王…
魔王降臨であります。
「ねっ、ちょっとやめ…ッ…」
「………」
はい、シカト…
ネクタイを更に緩めると、ただならぬダークオーラ全開の渚くんは、両腕で葵くんと聖くんのふたりの肩を抱く。
「はぁ………」
そして魔王にふたりが連行されたところで、静まる空気に溶ける重たい溜息…
あぁ…
「…また今日も始まっちゃったんだ」
思わず口に出るそんな言葉。
それもそのはずなのです…
彼らのこんな一連のやり取りを見るのは今日で何日目だろう…
いつからだったっけ、と指を折りながら思い出してみる。
最近、毎日のようにこんなくだりが繰り返されているのだ。
月が変わる少し前あたりからだろうか…
"何かが変だ…"と、アタシが妙な違和感を覚えたのはあることがきっかけだった。
そのきっかけというのが、プレゼント。
といっても、仕事の帰りのおみやげも、理由のないプレゼントも珍しいことではなかったりで、内容も食べ物からジュエリーまでさまざまだ。
得意の我が儘でお願いする時もあるけれど、あ…それはごく稀にね…ってのはおいといて。
