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今宵もネムリヒメに素敵な夢を...♡

第4章 バレンタインの事情♡その③









葵の部屋のまでやってきたオレは、ノックの呼び掛けに返事のない部屋の扉を静かにあけた。

シャワーの音は聞こえない。

ってことは…


「………」


あ…


葵の匂いのする部屋…

葵の匂いがするベッド…


窓から差し込む柔かな光の下、

彼女はそこにいた。


床に散乱したクッション。

剥ぎ取られ、床に落とされたシーツがすげぇ生々しい。

その惨事を物語るベッドのうえで、ブランケットにくるまった透き通るような白い肌。

長い睫毛を伏せ静かに呼吸を繰り返している彼女の寝顔は穏やかそのもので、葵に泣かされたのか目尻には涙の跡が見てとれた。


葵の匂いに包まれて眠る千隼…


こうして見ると

あぁ…

なんだか


「…ッ……」


…すげぇ複雑。


他のオトコに抱き潰されて眠るこいつを眺めるオレ…

よくよく改めて考えると、これってどんな状況だよ。

なんの罰ゲームだっつーの。


部屋に残る葵の匂いがやけに鼻につく。


オレは静かにベッドの縁へ腰をおろすと、まずはため息をひとつ。


「……千隼」


それから千隼の髪にそっと手を伸ばして、その名を口にした。

彼女の肩の裏側に色濃く残る自分の刻み付けた噛み跡を指でなぞる。

髪をそっとはらうと、首もとではピンクゴールドの華奢な鎖の先でひと粒ダイヤがキラキラと繊細な光を放っていた。

それから何度目かの呼び掛けでようやく寝返りを打つ千隼。


しかし…


「ん…、葵…く…」

「………!!」





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