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今宵もネムリヒメに素敵な夢を...♡

第6章 風邪なんてオレにうつしてさっさと治しちまえよ♡ver.渚






支度を始めようと嬉しさの半分でホッと気が抜けたとき、今朝ほどの例の症状は渚くんによってもたらせられたものだけではなかったのだと初めて自覚する。

それまでどこに潜伏してしていたのかわからないが、まるで突然解放されたかのようにそれらが一気にagain。ふらりと力が抜けてしまったことに遡る。


「まったく、社長がそんなことを知ったら…」

「わかっています」


──皇帝(魔王)の心眼。

何かと鋭い渚くんがそんなアタシに気付かずに黙っているだなんて考えもつかないし…

きっと彼のことだ。

こんな状態のアタシを引っ張ってきた明智さんを咎めるに違いない。

だから、


「明智さんにご迷惑はおかけしません。アタシのことはなにも、聞かなかったことにしてください」

「…つまり黙っていろと?」

「はい…。すみません」


あとで怒られるかもしれないけれど、今は…

忙しいのにせっかく時間をつくってくれた渚くんの気持ちを素直に受け取りたい。

それこそワガママだと言われるかもしれないけれど、今日は彼の側にいたいから。

アタシにこんなこと思わせちゃう責任は渚くんにあるんだから、その責任…

ちゃんととって、ね…


「…わかりました」


おおかた理不尽なワガママを押し通したアタシに対して車を降りる際にそう答えてくれた明智さんは、それ以上体調について触れることはなかった。

その代わりに社長室に通される一歩手前で、"この借りは…"と神対応の隙をついて出た鬼に凄まれたのは言うまでもないのだけれど。





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