リモーネ
第8章 セッコク
かえではしばらく星那の顔を驚いた様子で見ていたが不意に顔を両手で覆って下を向いた。
その突然の行動に星那が焦っていると、かえでがモゴモゴと話始めた
「…せなちゃんだいしゅき…」
「?はい
ありがとうございます?」
「いっぱいちゅき…」
「え、はい」
それきりかえでは話さなくなってしまったが、体調が悪いとか言うわけでもなさそうなのでおりる駅まで放っておいた
「かえでは駅で待っててください。」
「なんでー」
「俺、自転車を駅に置いてるんですよ。
だから、かえでと歩いて俺の家から駅までを往復するよりも俺ひとりでのほうが早いでしょ。」
30分もかかりませんから。と言い残し、小走りで改札へ向かった星那の背にむかって、えー。と不満を漏らしたが、星那が思った以上に頑固で、融通が利かなくて、我儘なことを本日未明に思い知ったばかりであるかえでは時間の無駄だと考え、強くは引き留めなかった。