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君の香り

第1章 ▷▷1.ハジマリ(→直緒)

高校2年生バスケ部の高木直緒(たかぎなお)は、朝から張り切っていた。
((今日から体育がバスケだ!))
自分の部活を授業でやるのが楽しみだったからだ。
しかしその気持ちはすぐに焦りに変わる。学校についてから気づいた。
((やばいハチマキ忘れた…。))
大好きなバスケの授業の1回目から忘れ物をするのはありえない!と思った直緒は、急いで後輩に借りに行くことにした。 

1年生の教室に着いたが、肝心の後輩がいない。廊下でウロウロしていると、勢いよくドアが開いた。
「高木先輩どうかしたんですか?」
「おっマツコ!ちょうど良かった、優菜呼んでよ。」見上げると目の前に立っていたのは長身で爽やかそうな青年―小松智也(こまつともや)だった。小松は男バスだったので知っていた。
「『マツコ』ってやめて下さいよセンパーイ。」
「『こまつ』だから『マツコ』なんだよーだ!」

ふと時計を見るとチャイムがなる5分前だった。
遊んでいる場合では無い。
「早く優菜呼んで!」
無事優菜からハチマキを借り、授業に間に合うことができた。

次の日、洗濯をしたハチマキを優菜に返そうとし、また1年生の教室に行った。が、次の授業が国語らしく、3年の先生の小林が教室にいた。
((どうしよう…バレたらやばいけど、優菜体育次だし…。))

迷って様子をうかがっていると、またドアが開いた。
「ハチマキ返しに来たの?俺が渡しておくよ。」
「えっまじ、ありがとう!」
((案外優しいんだな…。))
その時、直緒は胸の奥が不思議な気持ちになった。

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