箱……漆
第1章 妹
確認しろと言われても…
変色し…腐敗し始めた顔を見るのは……
一般市民には、無理な話しだ…
「御苑生さん…大丈夫ですか?マスク…してください…」
俺は、手に握っていたマスクを思い出す――――…
異臭対策用マスクだったのか…早く言えよ…
俺は、ハンカチで口元の汚れを拭き―――…マスクをした…
うぇ…
今度は、マスクの中で自分の嘔吐臭に戻しそうになる…
踏んだり蹴ったりとは…この事だ…
「雰囲気や…特徴……解る範囲でいいですから――…」
警察も…遺体から距離をとりながら俺に聞いてくる…
警察も…いくら見慣れてるとは言え…
これを直視はできないだろう…
「―――…特徴…ですか」
俺は…あまり接近せず…
顔を確認した…
これが……妹の香なら…
目尻に…泣きホクロがあるはず―――――――…
「―――――…あった…」
変色し…腐敗が進んだ顔だったが…
香のチャームポイントでもある泣きホクロがあった――――――…
「――――…香―――…」
俺は、もう…この遺体を見て…
吐くことはしなかった…