テキストサイズ

君と僕。

第10章 君と僕と誕生日

時雨さんの誕生日が迫っている。
しかし。

「誰か血液の教科書持ってね!?」

「なぁ微生物学ってどこまで出るっけ?」

「解剖学の教科書貸してぇ」

大学はそれどころではなかった。
6年制の医大で、まだ2年生。
まだまだひよっこで、座学も多いので、当然。

「テスト多すぎだろぉ!!!」

発狂する文希の気持ちも分かる。
来週あるテストは本当に地獄だ。
解剖学、微生物学、血液学。
どれも確かに必要だが、範囲が広すぎて頭がパンクする。

「感染経路が...」

「いや、それ母子感染だろ?」

「それで獲得免疫が」

自習室に、と設けられた大教室には、医学生がびっしりと詰められていた。

「もう患者なんていなくなれば良いのに...」

「やめろ文希、僕らの仕事がなくなる」

でもそろそろ限界か。
僕はわりと時雨さんのおかげで前倒しに勉強をしていたので、余裕ではないにしろ切羽詰まってもない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ