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君の隣

第4章 衝動ーKOUKI sideー

「ごめんね、なんか。 変なとこ見られちゃったね」


出来るだけ平静を装って身なりを整えた。


「一応芸能人なんだし、こーゆー誰でも使えるような場所で、あーゆー事しない方がいいと思うけど」
「うん、そうだね、ごめん。 今後気を付けるよ」
「別に、謝られても、私には関係ないけど」


明らかに嫌悪感を示した表情でこちらの事も見ずに注意してくる。
そりゃそうだよな…

この状況なら俺もすぐにここを立ち去るべきだと思うが、気になっていた彼女が目の前にいて、しかも他に誰も居ない、こんなチャンスめったにないし、嫌がられていると分かってはいながらも、話し掛けられずにはいられなかった。


「資料、探してるの???」


彼女の肩がビクッと動く。
俺の事を明らかに警戒している。


「あ、うん… 課題来週だから…」
「俺、来週の講義仕事で出れないから昨日課題出してきたんだ。 これ、まとめやすかったよ」


俺より頭1個分くらい小さい彼女の頭上に手を伸ばし、文献を1冊取り差し出した。


「ありがとう、読んでみる」


受け取りはしたものの分かりやすく愛想笑いを返され、すぐに本棚に向き直す。
これ以上話し掛けるなオーラを放ってはいたが、どうしても前から気になっていた事だけは聞き出したかった。
そそくさと出て行こうとする彼女を俺は引き止めた。


「深瀬さんて、安浦ってやつと付き合ってんの???」
「えっ、なんで???」


彼女の肩がまたビクッと上がる。
俺、彼女の驚きポイントをいちいち刺激してしまうみたいだ。


「あいつはやめといた方がいいよ。 いい噂聞かないから」

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