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teardrop

第7章 7滴

寝静まってすぐ…。

「夢なんかじゃない…あれは私の記憶…」

眠ってる透花が突然、喋りだす。

「ウッカリしてたわ…私の記憶が透花に…気をつけなきゃ」

目覚めたのは蓮葉だった。


「透花…少しは前向きになったのね…じゃあ、私は不要?」

一瞬考えるとフッと鼻で笑う。

「そんな事無いか…アナタはとても傷付きやすくて脆い…その証拠に私がいる」

学校のトイレで覚醒し、真紀と再会した事を思い出す。

「あの女…」

笑いを堪えて「化粧しても、あんな技術じゃ全て無駄よね」と言うと、耐えられずに声を殺して笑った。

ようやく笑いが収まると、大きく一息吐いた。

「気を付けなさい…藤沢陽斗が言ってたでしょ。…あーゆー奴はしつこいって…」

内に眠る透花へと囁く蓮葉。

「でも、あの程度じゃ、あの女もまだまだ私には物足りないかな…もっと調子に乗って貰わなきゃね…」

透花の気持ちとは裏腹な蓮葉の思い。


「ああ…そう言えば、初めて直接見たわ」

そう言うと、藤沢の顔を思い浮かべた。

「あの髪…」と言いながら手を伸ばして、空を撫でる。

そして腕を引いて少しの間、何も考えずに天井を見つめていた。


ゆっくり起きあがった蓮葉は薬を出す。

「鎮痛剤…飲んでおかなきゃね」

目覚めた透花が酷い頭痛にならないようにと思い、薬を飲みこむ。

「厄介な事に透花の痛みは私にも伝わるのよ…」

蓮葉は小さく溜め息をつくと再び、横になった。

目を閉じる。

『私はここに居る。存在している…けど、誰も気付かない…いつか…きっと…』

静かに沈めていく意識。

蓮葉も眠りについた。

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