テキストサイズ

teardrop

第2章 2滴

「まただ…」

“誰か”が言った。

「透花…また、あそこに行ってる…」

“誰か”はその場所に行くのが本当は嫌だった。

あの場所はとても暗い…そして深い。

何よりも怖くて、危険。

闇の奥底には触れてはいけない存在がある。

「…あー、もうっ」

『しょうがないなぁ…』と思いながら深い闇の底へと沈んでいく

『やっぱり、いた…透花…』

透花は闇の奥底で立ち尽くし、幼子を見ていた。

そして、幼子に向かって一歩進み出そうとする透花。

「透花!」

“誰か”は透花を呼び止めた。

透花は足を止めて声の主を探してる。

『…私は透花には見えない』

透花は声の主の姿を見つけられず、また幼子の方へと進もうとする。

「そっちは行ったらダメだって!」

またこっちを振り返る透花。

『これ以上、ここにいたらヤバイなぁ…』

闇の中で微動だにしない幼子と死神を見る。

闇がそのまま透花と“誰”かを取り込もうとしているようにも感じる。

“誰か”は意識を透花へ近付ける。

「ほら、もう行こう…こんなとこに居たらダメだから」

そう言うと、透花は納得したように手を伸ばす。

その手を掴んで透花を闇の底から引き上げる。

引き上げた場所もまた暗い。

けど、ここは闇の奥底ではない。

透花は一人で在るべき場所に向かって消えて行った。

「…きっとまた透花はあの場所に行く」

“誰か”が、そう言った。

『このままじゃ私も…』

“誰か”は静かに思った。

「やっぱり私が…」

そう言い残し、闇に溶けていった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ