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果てない空の向こう側【ARS】

第11章 果てない空の向こう側(智)

和也は、晩めしを食べたら城島先生のところへ戻ってしまって、俺ひとり残された。

残されたなんて言っても、母ちゃんが夜勤の時はいつもひとりだから、今さらどうってことはない。

しかし、今夜はなんか違った。

時間がたつのがやけに遅く感じて、時計の音が気になった。

テレビを付けてみても、音と光が頭の中を通り過ぎるだけで、なんか不快ですぐに消した。

自室に戻って、銀粘土を出した。

小さく小さくちぎった銀粘土を、指先でこねた。

しばらくその銀粘土を見つめたあと、粘土へらを取り出し細工した。

そういえば、俺が生まれた時は父ちゃんはどうしていたのかな。

その当時は、今みたいに立ち会い出産は主流じゃなかっただろう。

テレビドラマみたいに、病院の廊下をうろうろしていたのかな。

それとも、仕事中だったのかな。

あー、聞いとけばよかった。

父ちゃんが生きているうちに、聞いとけばよかったな…。

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