テキストサイズ

方位磁石の指す方向。

第6章 scene 5.5

相葉side



「智、早く」

「待ってよー」


のろのろ動いてる智の
手を掴んで、
ちょっと小走りする。


「も、そんなに急がなくたって
いいじゃんかぁ〜」

「ダメ。
俺ご褒美まだ貰ってないから…

活躍したんだからさ、
早くちょうだいよ」

「…仕方ないなぁ
相葉ちゃんのバカ」


ふわり、と優しく笑う。



おーちゃん


なにがいいか
迷った末に
智になった。

ほら、なんか恋人っぽいし。


「…それ、ダメ」

「え?」

「相葉ちゃんじゃないでしょ。
ふたりっきりのときは
なんて呼ぶんだっけ?」

「……」



顔を赤くさせて
俯いてしまった。


「…ねぇ、智、
早く言わないとここで
キスしちゃうよ?」


塀に追いやって、
顔をギリギリまで近付ける。

そうすれば、ポツリと小さな
声が聞こえた。


「ま、まー、くん…」


…うん。

なんだこの可愛い生き物は。


「や、んんっ、」


やっぱ、我慢できないや。

どーせ誰も通んないし。


智に向かって微笑んで
油断したところで
キスをした。


「ん、んん、」


唇を離せば、
顔を真っ赤にさせた智と
目が合う。


「ば、バカっ…」

「んふふ〜、行こっかぁ〜♪」


呑気に言う俺の背中を
バシバシ叩きながらも、
嬉しそうに微笑む智。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ