方位磁石の指す方向。
第6章 scene 5.5
智を好きって自覚したのは、
かなり前だ。
多分、翔ちゃんが智のことを
好きってことに
気付いてからだと思う。
智が翔ちゃんのものに
なるのが嫌で。
ずるいことしたんだ…
「智、こっちだよ」
「ん、」
今日はいつものおうちデートじゃない。
学生らしく、
放課後デートと言おうか。
あ、制服デート?
よくわかんないけど、
そんなとこ。
「ねぇ、智。どこにいきたい?」
「えっ、決めてねえの?」
「…悪かったね。」
「いや、別にいいけど…とりあえずさ、
どっか入らない?寒いし」
「わかった」
智といると、
素の俺が出せる。
笑う顔だって、
喋り方だって。
もちろん翔ちゃんもだけど、
智はそれ以上に俺のことを知っている。
もちろん俺も、
智のことを知っている。
俺は智の特別で、
智も俺の特別なんだ。