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方位磁石の指す方向。

第1章 scene 1






「間に、合ったぁ…」



ここ、裏山の近く。


フェンスが破れてるし、
高さは二メートルくらいしかないから
頑張ればヘタレの俺でも飛べる。


で、あとは二宮だけ。



「二宮、おいで。」

「……。」


ふるふると首を横に振る。


…怖いのか?



「二宮、間に合わねーぞ。」

「…怖い。」



そう言いながら
俯いてしまった。


…いやいやいやいや!

入学式マジで始まるから!


「二宮、おいで。」



俺は手を広げて、
二宮を抱き止める姿勢を作った。



そしたら、俯いてた二宮が
顔を上げた。



「ほんとにいいの?」

「ああ、早くしろ。」



二宮は怖がってたけど、
ぴょんっと飛び跳ねた。


その動きが
スローモーションに見えた。




「…ふー。セーフ。」

「…ありがと。」



…お、案外可愛いとこあんじゃん?


……入学式、どーしよ。



「翔、さん…手、」


二宮はポケットから
絆創膏を取り出した。


…そんなもん持ってるって
女子かよ。



「…擦りむいてるから。」

「お、さんきゅ」

「…///」



二宮は顔を赤くしながら、
絆創膏を貼ってくれた。


俺は二宮の頭を
くしゃっと撫でた。





嬉しそうに笑う二宮が
頭に焼き付いて離れなかった。

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