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方位磁石の指す方向。

第1章 scene 1

櫻井side



「もしも「しょーうちゃーん。」



…雅紀か。

家に着いて課題を
カバンから取り出したところ。

タイミングが良いんだか悪いんだか
わからないが、電話が鳴った。



「なんで帰っちゃったのさー。
言い出しっぺのくせにぃ…。

潤くんとの会話、楽しかったよー?」

「あぁ、そうか。で?」

「えー、もったいないなあって。
てか、翔ちゃんどこ行ってたの?」



…言っていいのか?

二宮の家。なんて…。



「んーと…秘密。」

「えーっ!ずーるーいー!」



耳でばかでかい声で言われて
携帯を投げ出してしまった。

キーンっと耳の奥で響く音。


畜生…。

明日、覚えてろよ…。



「しょーうちゃーん?」

「あぁ、もう、うるっせぇな!
一人でやってろ!」

「酷いっ泣」



そこで電話を切ってやった。

これ以上勉強の邪魔を
されてたまるか。


問題集のページを適当に開き、
勉強を始める。


…だけど、集中できない。

なぜかはわからない。
理由がない。



なんとなく、したくない気分。


こんなこと今まででなかった。
機械作業のようにやったのに。


「はぁー…っ」



問題集を閉じて、
気分晴らしに窓を開けた。

柔らかい春風が
心地好い。



気付けば瞳を閉じていた。



「……ふぅ、」


少し、落ち着いた。


きっと、雅紀の電話のせいだろう。
騒々しかったからだ。

そのせいだ。


…潤くん…とか言ってたよな。

二宮の友達なら
また明日にでも話してみようかな…。

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