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方位磁石の指す方向。

第1章 scene 1






ずーっと自分の部屋で待ってたら
翔さんが戻ってきた。


「はー……智くんちで
迷ったの久々だ…。」

「え、迷ってたの?」

「だってこの家、静かなんだもん。」


……た、確かに。

でも、あんまり関係なくない?

方向音痴なだけじゃない?



「てか、また泣いてたの?
目、赤くなってるよ?」

「…泣いてないもん。」

「俺、嘘つく子嫌いだよ?」

「……っ」

「…はいはい。
本気にしないの。」



翔さんが俺の頭を撫でる。

もうなんか感情がよくわかんなくて
翔さんにみられたまま泣いてた。


「…もー。
二宮は本当に泣き虫だなぁ。
ほっとけないっつーの?

俺もこんな弟が欲しいわ。
智くんが羨ましいなぁ…?」

「…ふふ。」

「あっ、なに笑ってんだよ。」

「翔さん、口にケーキのカス
ついてるよー…?」



慌ててとる翔さんは
初めて見る姿。

まだ知らないことたくさんあるもん。

ちょっとずつ、知っていこうかな。

焦る必要なんてないもん。



「翔さんはファミレス
行かなくてよかったの?」

「あー…うん。」

「…ほんとは行きたかったんでしょ?」

「…うん。」

「行けばよかったのに。」



でも、俺のとこに来てくれて
すっごい嬉しかった。


「…でも、二宮のことが
心配だったからさ?

こっちを優先したってわけよ。」

「…ありがと。」

「おう。」



たった一日だけだけど、
翔さんとの距離が近付いた…気がする。

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