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なぜ?

第13章 浮気相手

「名津子、もう俺に隠してることはないな?」
「うん。ない。少なくとも、秘密はない。」
「…ん。」

名津子は腕の中で体を預けてじっとしていた。
「名津子。顔、上げて。」
泣いた目でじっと俺を見上げる。「捨てないで。」と俺にすがるような目で。

「俺さ、こんなこと訊いたら嫌われるんじゃないかって、思ってることがあるんだけど…訊いていい?」
「…何?」

「俺って二人目?」
「うん。」
「ずっとしてなかったの?」
「うん。」
「誰とも?1回も?」
「うん。恋人以外とはしたくないし。恋人もできなかったし。」
「作らなかったんじゃなくて?」
「ジュノさん、私、モテないのよ…」
そりゃあいつもヒグマが一緒にいりゃあ無理だろ?俺だって最初にヒグマがいたら考えるぞ。

「いいんだ。モテなくて。俺にだけモテてればいい。」
「うん。ジュノさん、ありがとう。」
やっと笑った。やっぱりこの笑顔が一番だ。

「今日は呼び捨てにしないのか?」
「えっ?」
「ジュノって呼んでよ。俺、ずっと待ってんだけど。」
俺は返事を待たずに腰を上げた。硬い感触にビックリした名津子は、照れて下を向いた。追い立てるように、グイグイと圧してやる。
「ほらっ、呼べよ。」



「ジュノ…」


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