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僕の大事な眼鏡さん。

第1章 誰か好きな人はいますか?

 月曜日から金曜日、毎日ランチに来るらしい。

 らしい、と言うのは絵里ちゃんの情報。水曜日と木曜日は講義が午後まであるから、バイトには出られない

 今日は金曜日。

 午前中の講義が終了すると、ダッシュで店に行く。

 あ、あれ?
 今日は客、少ないな。

 店内は席が半分埋まってる程度。

 そして、あの眼鏡さんがいない。

「お、秀太。今日は楽だぞ。いつも来る、リーマンの会社研修旅行なんだってさ。」

 がーん。

 二日間、会えなかったから楽しみにしてたのになぁ。残念すぎる。

 はぁ…。

 大きな溜め息をつく。

 会いたかったなぁ…眼鏡さん。

 ホールも美佳ちゃんしかいない。厨房も店長だけだし。

 渋々、あいた席の片付けを始める。そんな中、店長が話しかけてきた。
 
「あ、秀太。明日、昼から来れるかな?」

 土曜日はいつも、午後からラストまで。

「絵里ちゃんと美佳ちゃん、休みなんだよね。昼までめいちゃんいてくれるんだけど、午後から俺一人になっちゃうから。」

「明日ですか…。」

 考えた所で、土曜日は午前中は部屋の掃除くらいしかないし。

「いいですよ。出ます。」

 眼鏡さんは月曜日までお預けかぁ。

 あーあ。

 寂しい、金曜日が過ぎていく。



 次の日、土曜日。

 昼から「あんじゅ」に行く。土曜日のランチ時間は人もまばらで、近所の常連の集会場になっている。

 客層がガラッとかわって、コーヒー一杯でほぼ一日を過ごすじい様やばあ様しかいない。

 こんな、寂しい中にあの眼鏡さんが居てくれたらいいのに。

 雑草の中に咲く、一輪の花。

 岩山に眠る、美しい宝石。

「おい、兄ちゃん。アメリカン頂戴よ。」

 夕方、常連のオーダーを聞き店長に通す。

 カラン、カラン。

 店のドアが開く。

「いらっしゃいませ。」

 ふっ、と視線を上げる。

 えっ?

「あ、いらっしゃい。珍しいですね。」

 店長が入ってきた客に声をかける。

「さっき、研修旅行から帰ってきたんです。もう、家に帰ってご飯作るの面倒だから、食べに来ちゃいました。」

 いつもより、カジュアルな服装の眼鏡さんが笑いながらいつもの席に着く。

「この時間、空いてるんですね。…あ、べつに変な意味じゃなくて…。」

「あはは。わかりますよ。昼は戦場ですよ。」

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