アップルパイと君の隣で
第6章 誕生日
電車に乗って会社までの道をゆっくりと進む。
いつもの風景、変わらない空気。
ただ一つ歳をとったぐらいで何も変わるものなど無い。
10代の頃には1年がとてつもなく長く感じたものだが、20歳を過ぎてからの1年は信じられない程のスピードであっという間に過ぎていった。
平凡でかわりばえのしない生活。
このまま何となく歳をとっていくのだろうか?
それとも結婚して子供でも出来れば何かが変わるのだろうか?
そんなことを考えているといつの間にか到着駅まで来ていた。
「降りないと...」
そう思ったのは一瞬で気が付くと扉は閉まっていた。
乗り過ごし、どう考えても遅刻だ。
「何やってるのよ私...」
阿呆すぎる。
寝坊したとかそういうレベルじゃない。
次の駅は佳奈の家があるところだ。
車掌さんのゆったりとした声につられるように気が付くと次の駅の改札をぬけていた。