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レット・ミー・ダウン【ARS・NL】

第4章 モーニングセット【翔】

カランカランとドアベルが鳴り、またひとり客が入ってきた。

「いらっしゃいませ。おはようございます。」

私が声をかけると、客は小さな会釈をした。

深くかぶった帽子に、黒縁のセルフレームの眼鏡。

彼はマガジンスタンドからスポーツ紙と一般紙を手に取ると、観葉植物の陰になる一番奥の席に着いた。

窓からは7月の光がさんさんと降り注ぎ、彼の横顔をきらきらと照らす。

「ご注文は?」

私は、お冷を出しながらオーダーを聞く

「Bセット。アイスで。」

「かしこまりました。」

父にアイスコーヒーのオーダーを通し、私は厚手の鉄製フライパンを火にかける。

フライパンが熱せられたら油をひき、卵を割り入れる。

ジューッという音とともに油がはじけ飛び、白身の端がチリチリと焼けていく。

トースターで焼いた4枚切りの食パンとサラダ、目玉焼きを白いプレートに盛り付ける。

タイミングをみはからって淹れられたキリッと冷えたアイスコーヒーとともに、モーニングセットを客のもとに運ぶ。

「お待たせしました。」

客は、テーブルの上に広げていた新聞やタブレット端末をすみによけた。

「Bセットとアイスコーヒーです。」

客は手を合わせると、アイスコーヒーにストローを差して吸い上げた。

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