
天然執事はいかがです?
第5章 手作りお弁当
「あれ、菜月?今日は売店行かないの?」
「う、うん…」
私のおかしな様子に舞弥は首を傾げた。
アルトさんが作ったお弁当…
アルトさんの、お弁当……
私はそれで頭が一杯で、授業に集中できなかった。
大好きな数学も理科も全くの上の空だった。
「実はさ、昨日来た新しい執事がね……お弁当作ってくれたんだ……」
「へぇー」
舞弥はお弁当の包みを広げながら、返事をした。
私も青い手提げから布に包まれたお弁当を取り出した。
お弁当は、小さな青い花の刺繍が施されたシルクの布に包まれていた。
包みを取ると、白地にパステルカラーの水玉がプリントされた普通の二段式のお弁当箱があった。
惜しいのは、シルクの布と似つかわなかったこと。
だけどそんな所がアルトさんらしい。
私は期待と不安でない交ぜになった気持ちで蓋を開けた。
「うわぁ…」
思わず感嘆の声が漏れた。
フワフワの厚焼き卵に、アスパラとニンジンの肉巻き、茹でたブロッコリーの下にはマヨネーズがすでに敷かれ、デザートにはイチゴが入っていた。
下の段には白いご飯が入っており、私は一緒に入っていたのりたまを満遍なく振り掛けた。
「おっ、普通のお弁当じゃないの」
舞弥は身を乗り出して私のお弁当を見て、そう言った。
良かったじゃない菜月、と付け加えながら。
