天然執事はいかがです?
第12章 アルトの過去
―――――
―――
小4の冬。
クリスマスイヴ。
世間はクリスマスを翌日に控え、カップルはいちゃつき、どこもかしこも幸せオーラで包まれていた。
……俺を除いて。
俺はこの晩両親を亡くした。
不慮の事故だった。
買い物に出掛けた二人は、信号無視をしたトラックに突っ込まれ、運転手共々即死だったらしい。
祖父母は生まれる前に他界しており、俺は親戚を頼るしかなかった。
けれども誰かが声をあげるわけでもなく、俺はどん底にいた。
そんなとき引き取ると言ってくれたのが、藤原さんだった。
奥さんと二人暮らしの藤原さんは夫婦で俺を孫のように可愛がってくれた。
実の孫は会いにも来てくれない、と悲しそうに二人は笑った。
そんな二人に俺は甘えられなかった。
どう甘えたらよいか分からなかった。
元から両親は共働きで、俺を可愛がったりなんかしなかった。
ほとんどお荷物状態だった。
家に帰れば置き手紙と数枚の札束が置いてあるだけだった。
それだからか、甘え方も分からなかった。
二人に俺は応えられなかった。
愛も優しさも分からない。