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異彩ノ雫

第4章  intermezzo 吟遊詩人 ~星合の夜



旅を重ねる吟遊詩人
求めに応え
東方の伝説を調べにのせる

満天の星を戴く湖畔の城に
遥か遠つ国の風が吹き
物語は今しも佳境を迎える…


━━…怒りのうちに天の王は
星の川にてふたりを別つ


リュートは更なる哀切を奏で
かすれるほどに高響く


━━互いを瞳に映しながら
触れることの叶わぬ二人の嘆き
その深い想いは王の心を動かした


身じろぎもせず聞き入る若き王子は
窓から差しこむ星明かりに
端正な横顔を浮かばせる


━━王は告げる
七月七日 橋を架けよう
ひと夜限りの逢瀬を許す、と


私なら…
突然に王子の声があたりを震わす

━━たとえ命に背こうと
いのちを懸けて川を渡り
愛しい姫をこの腕に抱きしめるものを…!

焔をたたえ
詩人をひたと見据える瞳

━━待つことになんの意味があるのか!


詩人は燃える瞳を静かに見返し
王子へ語る


━━待つは苦しく ただ切なく…

なれど
想いの中で時を過ごすは
さながら
雪降る空を見上げつつ
花の季節を待つ心地にも似て
心ときめく

約束の刻へと
想いを醸す時間こそ
逢瀬のひと夜にそそぐ夢…



天に流れる星の川
彼方の星に何を想うか
吐息に滲む王子の愁い

リュートの調べは うたい続ける
この 星合の夜の中…







(了)


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