飴と鞭と甘いワナ
第10章 2匙め
ジリジリと二宮さんとの間合いが微妙に開いてくから
"ちょーっと 待ったぁ!!"
正にそんな感じで。
間髪入れず、逃すもんかとその細っそい手首をむんずと掴んだ。
咄嗟に振り払おうとするのを も一度グッとチカラを籠めて握り直し、俺の方へ引き寄せた。
観念したのか 二宮さんは蹌踉(よろ)めいて花壇の縁に腰を下ろすと
「こっち…」
"…見ないで"
項垂れながら か細い声で呟くと両手で顔を隠した。
だから
「…来てくれたんだ」
恐らく
"何かあった"
ワケでもなく
"何もない"
多分そうなんだろうけど
"何か"ワケの分からない衝動"
そんな不透明な感情に突き動かされてしまった結果
"此処まで来てしまった"
……そう云うコトなんだろうな。
恐らく彼の中は
"ヤッちまったぁ"感満載で只今 絶賛自己嫌悪中…ってトコか。
だから
"何故?"
そんな問い詰めんじゃなく
「マジで来てくれると思わなかったです」
"嬉しい"
そう云う気持ちを前面に押し出すと 二宮さんがようやく顔を上げてくれた。
顔が赤いままなのは…ツッコんじゃダメだよな。