飴と鞭と甘いワナ
第10章 2匙め
「どんな雌猫かと思ったら…」
後ろで甲高い声。
「えっ?」
二宮さんの目が大きく見開いた。
振り返れば、仁王立ちのオンナがエントランスで腕組みして俺等を睨みつけてる。
はぁ…何様だよ、アノ女。
「サカった雄猫とは吃驚だわ」
とんでもなく失礼極まりない発言しやがった!
「それとも"ストーカーさん"かしら?」
ニヤと肩頬を上げてイヤらしく笑う。
前から思ってたけど…コイツ、嫌み言わせれば天下一品だな。
オンナの暴言にヒクンと息を飲んだ二宮さんの顔色が見る見るうちに失われてく。
ちくしょー!!マジ、ムカつく
「何言ってンだ、いい加減にしろ!」
ショーコさんの方へと向き直ったその隙に
「ゴメン…スミマセンでした」
脱兎の如く二宮さんが走り出した。
「あ、えっ……待てって」
ちょっとくらい話聞けよ。
「待てってば!」
何の弁明もしてない。
「……少しは釈明させろって」
遠のいてく後ろ姿に無駄な足掻きだと分かっていても叫ばずにはいられない。
こんな風に思うのはアンタだけだよ、二宮さん。
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