飴と鞭と甘いワナ
第10章 2匙め
"…好い気味"
オンナの呟きに一瞬で頭に血が昇った。
胸倉を…オトコなら間違いなく掴んでた。
その猛る気をどうにか抑え、睨むだけに留める。
黙ってオンナの脇を擦り抜ける。
「何とか言ったら?」
今の俺へまだ高飛車に言えんだ。
ある意味 大した玉だよ。
だからって 何か云う筋合いはこっちには無いんだ。
エレベーターのボタンを押す。
「…雅紀!」
呼ばれても"応じない"のが俺の答えだ。
ポーンと相変わらず軽い音と一緒にエレベーターのドアが左右にスライドした。
「馬鹿」
後ろでドアが閉まる瞬間、彼女の声と一緒にカツンと踵に何かがぶつかった。
一人きりの空間で。
足元を見れば
「へぇ……」
俺が外してたringが転がってた。
「見つけたんだ…」
"…相変わらず そう云うトコ鼻が利きやがる"
そのまま踵でその忌々しい丸い輪っかを踏みつけた。
ざまーみろ。
腐れ縁は解消だ。
俺はアノ人を捕まえにいく。
理由?…そんなの要らない。
ただ 俺がそうしたいだけ。