虞犯少年
第6章 何も聞こえない
「明日香もすごい人を彼氏にしたよね」
茶髪の長い髪と大きな瞳が印象的な美人さん。嫌味のない笑顔を振り撒いて「大丈夫?」なんて私の心配までしてくれた。
それに私は泣きつく勢いで美帆に抱きつけば、よしよしと頭を撫でてくれる。まるでお姉ちゃんみたい。
いい子なんだよね。私の周りでピカイチのオススメ。嵐だって私なんかよりも、美帆みたいな子を彼女にすればいいのに。と心の中で漏らした。
「まさか明日香があの九条嵐と付き合うなんて思ってなかったよ」
た。
私だって、自分があんな男と付き合うなんて考えなかった。想像さえしたことなかった。
どこから間違えたのだろう…
考えるだけ無駄なのに考えてみた。やっぱり答えなんかない。逃げる術もない。いっそのこと嫌われたほうがマシだ。