虞犯少年
第9章 歪世界
「ありがとうございました」
様になった接客も最近じゃ、かなり気を使うようになった。私を見張る視線がずっと痛い。レジに並ぶ人が男の人だったらいちいち心臓が痛くなる。チラッとガラスの外に目をやって溜め息を吐きたいのを我慢した。
コンビニでのバイトがこんなにも精神的に疲れるなんて。
手に触れたり、無駄に喋ったり、笑ったりしたら嵐にキレられる。
仮にも相手はお客様なのに、
「他の男に愛想振りまいてんじゃねーぞ」
って。どう考えても出来ない無理難題を嵐は平然と言うから困る。
男に笑うな。必要最低限しか喋るな。
接客態度としてニコニコしてることも大事なのにそれさえも許されない。お客様相手だけじゃなく、それはバイトの人たちにも同じように。
勝手に決められて押しつけられた約束を守れなかったら当たり前のように殴られて、激しい怒りをぶつけられる。
嵐がキレたら本当に怖い。顔つきが変わって表情も声も目も鋭くなる。だからなるべくキレさせたくない。無理矢理抱かれるのも嫌だ。体がもたない。
だから無茶だと分かってても忠実に守ろうとする私はもはや、嵐の言いなりで"所有物"。