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虞犯少年

第11章 切り裂いて笑う




嵐のお兄さんの名前は新(しん)さんというらしい。


九条新といったら喧嘩が強く元暴走族の総長で、いくつかの伝説を残した男。

過去に何度もの修羅場を越えてきたその背中に憧れる者
拳を握りその背中を憎んだ者

とにかく九条新は最悪で最高の男だったと言う。


そのせいもあって新の弟ってだけで嵐は一目置かれる存在だった。

だからってそれだけが理由じゃないけれど。

加えてあの強さは兄譲りなのか、我が道をただ真っ直ぐに行く姿にまた憧れる者と唇を噛み締める者がいるらしい。



「…そうなんだ」


「明日香は知らなすぎ!嵐さんに次の総長を譲るって噂だったけど、どうやら興味ないってそういうチームには加わってないみたい」


「美帆詳しいね」


「これくらいはみんな知ってるよ」



呆れたと溜め息を吐く美帆に私は苦笑いをこぼした。


まさか嵐のお兄さんがそんなに凄い人だったなんて…



その日の放課後、隣には当たり前のように肩を抱く嵐がいて私はいつもの質問に慣れたように答える。

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