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パパ、もう一度抱きしめて

第9章 淋しがり同士


「ただいまー!」

私は家に着くと、ママの姿をさがした。
部屋の中はとても静かだ…。


キッチンからリビングへ覗くと、ソファーに横になっているママがいた。

「お帰り、梓。映画はどうだったの?」

いつもなら、部屋の中をきびきびと動き回って家事をしているのに。
私はママの傍にかけ寄った。


「映画は行かなかった。ママ、つわり辛いんでしょ?」

「大丈夫よ。大したことないわ」

私は、起き上がろうとするママを止めて言った。


「無理しちゃだめ。後は私がするからまかせて」

「えっ、でも。一体どうしたの?」


「今までママにツンツンしちゃって、ごめんなさい」

「梓…?」


「今日ね、ある人から聞いたの。ママがどれだけ大変な思いをして、私を産んでくれたのか」

「…」


「女の人が子どもを産むのって、命懸けなんだね?私、何もわかってなくて…」

「そうだったの。梓にそんな話をしてくれた人は、誰なのかしら…?」


久しぶりに甘える私の髪を、
ママはそっと優しく撫でてくれた……。

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