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楔 ---KUSABI---

第1章 壱・白羽の矢

夜中に、目が、覚め、た。

夜中、と解ったのは、未だ部屋の中が暗いから。
何故、目が覚めたなんて考えるまでもなく、
そのまま夢の住人に戻れば何の問題もないはず・・・だった。

珍しく意識がはっきりしている状態で、
何気なく、体を、起こ・・・・・・。

「ヒッ」

短く悲鳴。それ以上の声を出すことは何故か出来ず。
喉を見えない力で潰されている様に、声が出せない。

体を起こして目を向けた方向に、人が立っていた。
白装束の・・・男???
顔も白い布で覆っているから性別は不明。
でも男と思われる人の全体はなぜかぼんやりしていて、
弓を射る前の状態で、私を的にして・・・立っている。

コ、ロ、サ、レ・・・ル・・・

逃げなければならないと解っている。
でも体が動かない。
声も出ない。
金縛りにあった様に動けない。

唯一、動かせる事の出来る目ですら、男の弓の先から
視線を逸らすことは叶わない。

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