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キラキラ

第31章 イチオクノ愛


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目が覚めた。

いまだに残るふわふわとした感覚のなか、気を失うまえの出来事を思いだし、ああ、俺またピンチなのかも、とうんざりした。


…………てゆーか……ここどこ?


自分の周りは真っ暗なんだけど、頭上から微かに光が差し込んでいるのが分かった。
なんだかごちゃごちゃと、いろんなものが入った箱に入れられているみたいだ。

手足に力をいれてみて、無事に動くことに安心する。
どこにも痛いところはなかった。

俺は、よいしょ、と、中のいろんなガラクタを足場に、上へ上へとにじりあがった。

用心深く頭をだすと、目に入ったのはよくあるオフィスビルの廊下。

にょきっと目の前にある長い棒は、どうやらモップの柄。


ははーん……これお掃除道具か。


俺が今入ってる箱は、清掃業者の人がよく使うお掃除道具入れのようであった。
おそらく、撮影場所に来てた業者の荷物に放り込まれて、そのまま別の場所に来てしまった……という筋書きか。

別の場所は確かなんだけど……どこだろう、ここ。

この箱からでるのは危険。
でも、このままどこかに連れていかれるのも危険……。

都内ならいいけれど、とんでもなく遠いところに連れていかれたら、もう帰れない……。
いや、既にめちゃくちゃ遠いところかもしれない……。


しばらく考えたが、なにもしないでじっとしてるのは性にあわないのが俺。


よしっ……脱出だ!


周りに誰もいないことを確認して、俺は、飛び降りた。

ツルツルの床に足をとられないように気をつけながら、とことこ走る。
人の気配も探りながら、薄暗い階段をかけおりた。
運が味方してくれてるみたいで、誰にも会わない。

一階についたことを確認しながら、物陰にかくれながら出口を探す。


幸いにも、ビルの正面玄関は開け放してある。


受付嬢の後ろに身をかくし、歩行者の一番少なくなったタイミングで、俺は全速力で外に転がり出た。

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