
キラキラ
第31章 イチオクノ愛
********
目が覚めた。
いまだに残るふわふわとした感覚のなか、気を失うまえの出来事を思いだし、ああ、俺またピンチなのかも、とうんざりした。
…………てゆーか……ここどこ?
自分の周りは真っ暗なんだけど、頭上から微かに光が差し込んでいるのが分かった。
なんだかごちゃごちゃと、いろんなものが入った箱に入れられているみたいだ。
手足に力をいれてみて、無事に動くことに安心する。
どこにも痛いところはなかった。
俺は、よいしょ、と、中のいろんなガラクタを足場に、上へ上へとにじりあがった。
用心深く頭をだすと、目に入ったのはよくあるオフィスビルの廊下。
にょきっと目の前にある長い棒は、どうやらモップの柄。
ははーん……これお掃除道具か。
俺が今入ってる箱は、清掃業者の人がよく使うお掃除道具入れのようであった。
おそらく、撮影場所に来てた業者の荷物に放り込まれて、そのまま別の場所に来てしまった……という筋書きか。
別の場所は確かなんだけど……どこだろう、ここ。
この箱からでるのは危険。
でも、このままどこかに連れていかれるのも危険……。
都内ならいいけれど、とんでもなく遠いところに連れていかれたら、もう帰れない……。
いや、既にめちゃくちゃ遠いところかもしれない……。
しばらく考えたが、なにもしないでじっとしてるのは性にあわないのが俺。
よしっ……脱出だ!
周りに誰もいないことを確認して、俺は、飛び降りた。
ツルツルの床に足をとられないように気をつけながら、とことこ走る。
人の気配も探りながら、薄暗い階段をかけおりた。
運が味方してくれてるみたいで、誰にも会わない。
一階についたことを確認しながら、物陰にかくれながら出口を探す。
幸いにも、ビルの正面玄関は開け放してある。
受付嬢の後ろに身をかくし、歩行者の一番少なくなったタイミングで、俺は全速力で外に転がり出た。
