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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


押し当てられるふっくらした唇の感触に、ふと我にかえった。
ぼやけた視界が、急にはっきりした。

ゆっくり唇を離したショウが、そのまま辛そうに俺の頬を両手で包んだ。
そして、親指で、俺の涙をそっと拭ってくれた。


……温かい


「そんなに自分を責めたら……きっと、あなたを助けたジュンが困ってしまいます」

「……で……も……」

「ジュンには申し訳ないけど、あなたが大怪我しなくて良かった……」


言って、もう一度顔が傾いてきて、ぼんやりしてる間に、再びキスされた。


慈愛に満ちたそれを、俺は、ただ受け入れてた。

唇を二、三度優しく食み、ショウは、また俺の顔を見た。


「こんなことしてるのを知ったら、ミヤやジュンに、俺は殺されそうですね(笑)」

「……うん……」


笑って、ショウの手が、俺の髪を撫でる。
あたたかくて、その感触に体を預けた。


「心配いりません。あいつは、昔、木のぼりしてた大木から落っこちても、擦り傷ですんでた奴です」

一緒におちた俺は、腕の骨を折りましたがね、とショウはくすっと笑った。


「昔から悪運強いやつなので。絶対大丈夫です」


何度も繰り返し紡がれる、大丈夫という言葉。
気休めにすぎないそれが、俺にとっては、何よりありがたかった。


「うん……ありがとう……」

「いえ」


言って、もう一度顔が近づいてきたから、調子にのるな、と、両手でショウの口をおしとどめてやった。


「もうダメ」

「……なんだ、残念」


ショウは、いたずらが見つかった子供のように肩をすくめてみせた。


「お前、真面目なふりして、手、早いんだな」

「あなたを好きですから。当然」

「…………ムッツリか」


ぼそっと言ったら、ショウは、ははっと笑った。


「隙を見せたらつけこみますよ。俺もジュンも。気をつけてくださいね」


その言葉がほんとかどうかはわからない。

けれど。

……おかげで体の震えは止まっていた。

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