
キラキラ
第33章 🌟🌟🌟🌟🌟
マリウスのその言葉にひっかかった。
カエラって……?
「あの……今からカエラ……様の部屋へ?」
階段をあがりかけてるサトコ様にたずねると、彼女はこっくり頷いた。
「お茶にご招待いただいたんです」
「…………」
朝のカエラの言葉を思い出す。
確か……今回の祭りの事故の被害者のなかに可愛い女の子がいる、って言ってた。
さらにその子をお茶に誘うとも、言っていた。
……そういうことか。
ようやくサトコ様が城のなかにいるわけが分かった。
どうしてこんな広い国で、こんな都合良く、出会えたのだろう、と思っていたが……。
俺がこの国の王子になったなんていう情報が彼女にいくわけないんだ。
……いや。でも待て。
「え……サトコ様、事故にあわれたんですか?」
「はい」
またこっくり頷かれて、心臓がとまる。
事故にあうだなんて!そんな物騒なことに巻き込まれるなんて……!
やはり、俺はお側を離れるべきじゃない……!
俺は、ざっとサトコ様の頭のてっぺんから足の先まで目を走らせた。
俺を上目遣いで見上げる顔は、どこにも傷はない。
見たところ……怪我はないみたいだけど……。
「お怪我はなかったんですか?」
すると、サトコ様はちらりとワンピースの裾を持ち上げてみせた。
そこには、真っ白な包帯をぐるぐると巻かれた細い足。
「……擦り傷だけです。こちらのお医者様のフミヨさんに手当てをしてもらいました」
「……良かった」
心底ほっとして、息を吐き出す。
だがまた、ふと違う疑問がわく。
カエラは、被害者のなかに、って言い方してた。
サトコ様の他に誰かいるのか。
「誰か……他にお怪我されたんですか」
「……ジュンが、私を庇って大怪我をおいました」
つらそうにうつむいて、サトコ様が小さく言った。
……血の気がひく。
松の国のあいつと、ここまで来たというのか。
