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キラキラ

第34章 バースト9


「……そうなの?」


かずが目を丸くして、俺を見つめる。


「…………」


そうだとも、違うとも言えず、俺は曖昧に笑うにとどめた。

肯定すれば、かずは気にするだろうし、否定すれば、フォローしてくれた雅紀の想いを踏みにじることになる。

……だけど、俺の表情で、かずは察したみたいだ。


「いいのに……そんな気をつかわなくたって」


言いながらも、ちょっと頬を赤らめて上目遣いに雅紀をチラ見しているかずが、なんだかみたことない仕草で、可愛い。

そして、そんなかずの頭に手をやる雅紀が、男前だ。
親友の恋人に対する顔が見れた気がする。

いいやつらだ、ほんと。



「ほんとに、もう大丈夫だから。ありがとうな」

「……気を付けてね」

「変なやつに声かけられてもついてくんじゃないぞ」

「わかってるって(笑)」



心配そうに手を振るかずと雅紀に、手を振り返し、俺は三号館のいつもの待ち合わせ場所に向かった。






……うわぁ……まじか。


カフェも開放してるせいか、いつもの三倍くらい賑わっていた。

指定席のようにいつも陣取る場所も、今は見知らぬ学生たちでいっぱいだ。

俺は、空席をさがしてフロアを見渡した。

この際、いつもの場所ではなくても、座れたらよしとしよう。
翔ならきっと見つけてくれる。


俺は注意深く人混みをみつめ、立ち上がった学生の横に歩みより、場所をキープするために、ここいいですか?と声をかけた。

その声をかけた学生の顔は、全くみてなかった。

だから。


「あ。いつかのイケメンくーん」


聞き覚えのある声にギクッとして体が硬直する。


……まさか。


「覚えてるかな?法学部の山下でぇーす」


恐る恐る顔をあげたら、いつだったか、ここでサークルの勧誘をしてきた、チャラい学生その人であった。

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