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キラキラ

第34章 バースト9


かずの心配そうな……どころか、泣き声に近い呼びかけに負け、応答したのは、それから一時間後。

眩暈もおさまり、やろうと思えば跳べるくらいにまで回復してから、俺は、何度目かの潤くん!の呼びかけに、ごめん……と、テレパスで応えた。

飾りに使うという、ピンポンだまに目玉をかきいれながら、意識を、かずへ飛ばす。


《潤くん?!無事?!》

《あ……ごめん……心配かけて》

《なにしてるの?どこにいるの?!》

《……学校》


正直に答えたら、数秒後、かずのすっとんきょうな声がした。


《……はああ?!》


俺は、自分の中でたてた筋書き通りの答えを口にする。
少しだけ胸が軋んだ。


《いや、来週の文化祭の準備に、どうしてもって急に呼び出されちゃって……》

《……嘘でしょ?》

《ほんとだよ》



俺の応答に、かずは少し黙った。

そして、ワントーンさがった声で、非難してきた。



《……翔さん……すっっごく心配してたけど》

《…………》

《俺も心配したけど》

《……》

《どうして、すぐにテレパスに応えてくれなかったの》

《………取り込み中だったから…》


俺の答えにかずは絶句したようだった。
胸がまた軋んだ。

かずは、しばらく沈黙したあと、突き放すように俺に言う。


《翔さんに連絡して。今すぐ》

《……スマホのバッテリー切れてて……》

《だったら!今すぐあの人のとこに跳んでいけよ!!》


怒鳴られた。

俺は、描いてた目玉を握りしめながら、唇をかんだ。

怒られてもしょうがないことをしたって分かってる。
翔にも、かずたちにも心配かけた。

……でも、俺の気持ちは?

こぼれそうな言葉を飲み込んで。



《うん……わかった》


俺は、目玉に血の涙を幾筋も描きながら、答えた。

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