
キラキラ
第34章 バースト9
「……お水いる?」
女子から、これまだ飲んでないから、と、ペットボトルを差し出される。
いつもなら断る場面だ。
だが、体が砂のように重く渇ききっていた俺は、
「……ありがとう。今度返す」
と、礼を言い、それを受け取った。
そして、ふう……とため息をついて、顔をあげた。
女子たちは、心配そうにしながらも、この場から離れようとしない。
「…………」
その瞳の裏に、俺が、仮装を引き受けることを期待する光を感じて苦笑いしてしまった。
俺は考える。
仮装か……つか、俺の場合女装か。
そんなに俺にやってほしいんだ?
考えてるうちに、なんだか、ほんとにどうでもよくなってきた。
そして、ちょっと……反抗してみたくなった。
仮装くらい……まあ、いいか。
映画研究会みたいで面白いかもな。
水、という賄賂ももらっちゃったしな。
《…………潤くん?!どこいるの?》
突如、頭のなかに、かずの声が響く。
スマホの電源おとしてる俺に、連絡がつかないから、翔がかずたちにコンタクトをとったのだろう。
まるで、今から下す俺の決断を引きとめるようなタイミングに、笑いがこぼれた。
ごめん、かず。
俺は、かずの呼び掛けを無視して……言った。
「いーぜ……やってやるよ。ヒロインでもなんでも」
「わあ、ほんと!!?」
「え……松本、お前マジで?!」
「……ああ」
翔を、ちょっと困らせてみたくなった。
だって、俺、泥棒って言われたんだぞ!
……翔のバカ野郎。
