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キラキラ

第35章 屋烏之愛

「そういう上田さんはいないんですか、好きな人とか。付き合ってる人とか」

「……いねーわ」


水をむけたら、上田は一瞬とまって、ぷいと横を向いた。


……わかりやすっ


俺は、思わず、ぷっと笑いそうになり、あわてて口をかくした。
一方で、松本はキラキラした目になって、身を乗り出してきた。


「なに?お前こないだ、K高の女にコクられたって聞いたけど。オッケーしたのか?」

「……なんで知ってんだよ」

「相葉に聞いた」

「……あいつ……」


二人の会話を興味深く聞く。
こんなヤンキーのお手本みたいなやつに、コクるやつがいることが驚きだ。
やっぱ顔かなぁ……。
なんだかんだで、このグループは、やたら顔がいいやつばかりだし。

感心しながら聞いてると、松本はニヤニヤ笑って、上田をからかう。


「めちゃめちゃ可愛いってきいたけど?」

「女には興味ない」

「………女には?」


思わず聞き返すと、上田はまた一瞬固まった。
そして、すぐに、取り繕うように饒舌になり、


「とっ……にかく、俺はそーいうのに興味はねぇんだよ」


などと、いかに自分が恋愛向きじゃないか、聞いてもないのに、俺たちに説明を始めた。
その様がなんだか、かわいらしく見えて、うんうんと聞きながら、俺は残りの缶ジュースをあおった。

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