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キラキラ

第37章 寵愛一身


どういうこと……?


俺が不思議そうな顔をすると、松本はガリガリ頭をかいて、あー……言っちまった……と、呟いた。


「何を、我慢してた……んですか」

「……お前に触れること」

「どうして……?」


すると、松本は、どうして……か、と、呟き、そのまま黙っておもむろにポケットから出した小銭で、スポーツドリンクを二本買った。

どうしてかって……いうとだなぁ……と、言いにくそうになんだかぶつぶつ言いながら、そのうち一本を俺に手渡してくれる。

そのヒヤリとした冷たさに、気持ちが少し落ち着いた。
そのまま黙って、松本を見つめていると、彼は半分まで一気に飲んだあと、はぁ……、とため息をついた。
そうして、困ったように笑って、ぽつんと言った。


「……少しでも触れてしまうと歯止めがきかなくなりそうだったから……」

「……え」

「おかしいだろ。だから、なるべく触れないようにしてた」

「…………」


近頃、距離があるように感じたのはそのせいか。

妙に合点がいった。

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